アルテックのスピーカーが良い音で鳴らない理由

20年ほど前に「プロケーブル」の記事で読んだエピソードが、今でも印象に残っています。

ある相談者が、

「数百万円のアンプを使ってもアルテックA7が全く良い音で鳴らない。
何をやっても上手くいかない」

と助けを求めてきた、という内容でした。

それに対し、

「今お使いのケーブルをすべて捨ててください。それから相談に乗ります」

という返答があり、その後連絡が途絶えた、という話です。

事実か創作かは分かりませんが、考えさせられる内容でした。


なぜ鳴らないのか?

仮に私が同じ相談を受けたとしたら、まず確認するのは

  • 設置環境
  • 部屋の広さ
  • 使用目的

です。

アルテックA7のような劇場用スピーカーは、
もともと映画館や大規模空間での使用を前提に設計されています。

一般的な住宅のリスニングルームとは、前提条件がまったく異なります。


ミスマッチの問題

オーディオで音が出ない原因の多くは「機器の質」ではなく「相性」です。

  • 大空間向けスピーカーを小部屋で使う
  • 高出力アンプを高能率スピーカーに組み合わせる
  • 現代設計のアンプと60年前の思想のスピーカーを組み合わせる

こうしたミスマッチが起きると、
いくら高額機器を導入しても結果は伴いません。


A7というスピーカーの特性

A7は1950年代に設計された、高能率スピーカーです。

当時は出力の小さな真空管アンプが主流でした。
そのため、少ない電力で大音量を得られる設計が求められていました。

振動板が軽量でレスポンスは良い反面、
現代的な「深く沈み込む低音」とは方向性が異なります。

これを理解せずに「銘機だから」という理由だけで導入すると、
思っていた音とのギャップに悩むことになります。


高額アンプが必ずしも正解ではない

現代の高級アンプは、

  • 低能率スピーカーを強力に駆動する
  • 大出力で制動力を高める

といった方向性で設計されています。

しかし、高能率のビンテージスピーカーには
必ずしもその思想が合うとは限りません。

むしろ、シンプルな回路のアンプの方が
自然に鳴る場合もあります。


銘機という言葉に惑わされない

「銘機」と呼ばれるスピーカーには確かに魅力があります。

ただし、それは

  • どんな部屋でも最高の音が出る
  • どんなアンプでも鳴る

という意味ではありません。

機材は「環境との組み合わせ」で評価すべきです。


私の結論

劇場用スピーカーを一般家庭で使うには、

  • 十分な空間
  • 明確な目的
  • 特性への理解

が必要です。

流行や評判だけで導入すると、
結果的に多額の出費と後悔につながることもあります。

大切なのは、

「自分の部屋で、現実的に鳴らせるかどうか」

これを最初に考えることです。

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA